こんにちは、ロタケです。
8月のお盆休みを利用して、後立山連峰の南部、五竜岳から針ノ木岳までを5泊6日で縦走してきました。
すべて小屋泊まり。しかも1日当たりの歩行時間は4~5時間程度に抑えるという、ゆったり&贅沢な登山です。
ちょっと長くなっちゃったんですけど、旅日記風にまとめてみました。
(お盆休みの小屋の混雑度や、八峰キレットなどのコース危険個所など、各種情報を知りたい方はこちら。)
行程 2019/8/9(金)~8/14(水)
【1日目】
アルプス平駅(7:50)・・・地蔵ノ頭(8:03)・・・大遠見山(10:19)・・・五竜山荘(12:39)
【2日目】
五竜山荘(5:28)・・・五竜岳(6:40)[休憩15分]・・・北尾根ノ頭(8:45)[休憩2時間]・・・口ノ沢のコル(11:15)・・・八峰キレット小屋(12:00)
【3日目】
八峰キレット小屋(5:28)・・・鹿島槍北峰(7:00)[休憩15分]・・・鹿島槍南峰(7:54)[休憩1時間10分]・・・布引岳(9:50)[休憩15分]・・・冷池山荘(10:45)[休憩15分]・・・爺ヶ岳南峰(12:10)[休憩15分]・・・種池山荘(12:50)
【4日目】
種池山荘(6:10)・・・岩小屋沢岳(7:32)[休憩3時間]・・・新越山荘(11:00)
【5日目】
新越山荘(5:37)・・・赤沢岳(7:10)[休憩15分]・・・スバリ岳(8:50)[休憩10分)・・・針ノ木岳(9:45)[休憩1時間40分]・・・針ノ木小屋(12:05)
【6日目】
針ノ木小屋(6:10)・・・大沢小屋(7:57)[休憩10分)・・・扇沢(8:53)
ロタケの登山日記
(個人的な登山日記なので余計なことも色々と書いていますが、臨場感は伝わると思います。ちなみに今回はかなり長編です。)
0日目
新宿~五竜ゴンドラ
いつもの毎日あるぺん号。新宿からプレミアシートで熟睡しようと思っていたのに、来たのは4列シートのバス。確かに3列と4列どちらかって書いてあるけど、この差はデカい。
ロールカーテンはないし、携帯の充電もできない。これで多目に金をとるのはいかがなものか。。。(ー_ー)!!
ただ乗ってしまえばあとは寝るだけ。アイマスクと耳栓をして、気付けば扇沢。(そこまで熟睡できるなら、プレミア3列じゃなくてもいいじゃん!!と自らツッコミを入れる)
五竜のバス停に着いたのは朝の5時。下りたのは私1人。
朝早すぎて施設が全部閉まっていて、ゴンドラ乗り場にたどり着くのに一苦労。当然一番乗り。
1日目
五竜ゴンドラ~遠見尾根~五竜山荘
ゴンドラ乗り場のトイレで、コンタクトを入れ、水を補給して準備万端ながら、ゴンドラが動くのは7時半。
天気が良くて、今すぐにでも登りたい気持ちをなだめつつ、無駄に2時間半を過ごします。
平日のためか、ゴンドラ待ちは20名程度。どうやら今日の五竜山荘は混雑とは無縁か。
ゴンドラ、リフトと乗り継ぎ、登山口のアルプス平にやっと到着。唐松・白馬方面は綺麗に見えているが、五竜・鹿島槍方面は少しガスってる。
登り始めると、天気が良すぎて暑さが半端ない。しかもこの遠見尾根、背丈よりちょっと高い木々の間を延々と歩く道。
風が通りにくいのに、直射日光は首筋から後頭部に照り付けるという、なかなかハードなシチュエーションに、どの登山者も苦労している様。
しかも暑さにやられて、バテバテになったタイミングで現れるのが白岳への急登。この登り、なかなかにキツイ。
少し歩いては息を整え、少し歩いては息を整えを繰り返しながら、さらに、たまに緩~い鎖場をよじ登りながら、高度を稼いでいきます。
五竜山荘も見えているんだけど、なかなか近づいてくれなくて、かなり辛い登りです。
悪戦苦闘しながらも、ようやく白岳山頂に到着。
五竜岳は雲の中ですが、唐松方面は綺麗に見えています。しばし景色を楽しんでから、本日の宿「五竜山荘」へ。
五竜山荘 夕食まで
お腹がすいていたので、きのこうどんとコーラを食べて、一息ついてから本日の寝床へ。
部屋だけ指定されて、寝る場所は早いもの順。どうやら一番乗りだったようで、壁際の特等席を確保。
軽く熱中症気味だったので、コーラをもう1本投入し、少し昼寝です。
この日の晩御飯は2回転で、早く到着した私は当然1回転目の17時から。それまでは小屋の前のテラスで色々な人と話しながら時間を潰します。
山岳パトロールのお兄ちゃんとも話をしたんですが、
2日前に、五竜岳山頂の標識と白岳山頂、あと五竜山荘前の石にも雷が落ちたんですよ
と恐ろしい情報が。
あと、下の雪渓でサルの親子が遊んでるのが見えると思うんですけど、暑過ぎてサルが涼みに来てるんですよね
確かにサルが雪渓を滑り台にして遊んでいるのが見えます。
五竜山荘 夕食~就寝まで
そうこうしていると「第1回目のご飯の用意ができました」と小屋の女の子が呼びに来てくれます。
晩御飯は「カレーライス」。山で食べるカレーライスは、何でこんなにも美味しいんでしょうね。
「ごはん」も「ルー」もおかわり自由。ついつい2回もおかわりしちゃいました。
ちなみに山小屋では、単独登山の人のテーブルと、パーティーの人のテーブルとを分けて座らせるケースが多いんですけど、五竜山荘もこの方式。
私が案内されたのは1テーブル6名のところですが、単独登山の人ばかりで、初対面の方ばかり。
私の独断と偏見かもしれませんが、単独登山の人って、基本、社交性に欠けている人が多いですよね。そのため誰も一言も発せずに、コミュニケーションなく食事が終わるってこともよくあります。
ただ私、今回の登山では、
「他の登山者に積極的に話しかけてみる!」
というテーマを自分に課していたんです。
せっかく5泊も山小屋に泊まるので、色々な人に出会えるし、何も会話しないのはもったいないかなと。
そこで、咀嚼の音しかしないテーブルでしたが、勇気を出して、まずはお隣に座るテーブル唯一の女性に声を掛けてみたんです。
お話をしてみると、この女性、松本市在住の方で、60歳を超えてから地元の山岳会に入って登山を始めて、今日が初めての単独登山だとのこと。
八方尾根から入山して、唐松岳経由で五竜山荘に入られたとのこと。単独登山は初めてとおっしゃるわりには落ち着いていて、すでに色々な経験をされている様子。
ひとしきりその女性と話していて、
明日はどちらまで行かれるのですか?
と聞かれたので、
キレット小屋の予定なんです
と言うと、
私もキレット小屋を予定しているんですよ
と、テーブルの他の男性陣も会話に加わって、そこからは自然と6人全員で会話を楽しむことに。
カレーを食べながら、しばし楽しく会話をして、最後は明日のみんなの無事を祈って解散となったのですが、やはり皆さん、きっかけがあれば会話を楽しみたいのかもしれません。
知らない人同士で一言も話さずに食事を終えるテーブルもある中で、ほんのヒトトキでも楽しく会話できたことが嬉しくて、この山行の間は「積極的に声をかけてみよう!」と、心に誓った瞬間でした。
寝床に帰ってみると22人部屋(どうしたらこんなスペースで22人が寝れるんだろう?と首をかしげたくなるような広さですが。。。)に、今日は6名だけのよう。
3連休前の金曜日、一日早く山に入った判断を自画自賛しながら眠りにつきました。
2日目
起床・出発~五竜岳
いつものテント山行の感じで3時頃に目を覚ました私。ただテント山行と違って、山小屋でしかも2食付きだと、朝の準備ってほとんどないんですね。
トイレに行って、着替えを済まし、コンタクトレンズを入れて、荷造りをしてもせいぜい30~40分。朝ごはんまであと1時間半もあるので、まだ薄暗い小屋の外へ出てみます。
小屋の中はまだまだ寝ている人が多いのですが、テン場はすでに活気づいています。
時間が経つにつれガスが晴れ始め、今日も絶好の登山日和になりそうです。
少し朝食が早く準備できたようで、小屋の外にも声が掛かります。
今日の行程は五竜山荘から五竜岳を経て、八峰キレット小屋まで。岩場、鎖場が延々と続くコースで、岩場嫌いな私にとってはかなり難易度高め。
ご飯をおかわりして、しっかりと栄養補給です。
出発は5時30分。
さっきまでのガスもすっかり晴れ、五竜岳がその全容を現します。
小屋を出るとすぐに登り坂。しばし歩いてから振り返ると唐松岳や白馬岳が綺麗に見えていて、テンションが自然と上がります。
息が弾まない程度のスピードで、風景を楽しみながらゆっくりと高度を稼いでいきます。
頂上が近づいてくると鎖が設置されたちょっとした岩場が現れます。登山者も多く、落石も気になったのでここでヘルメットを装着。
手強い岩場を何個かやっつけると山頂に到着。すでに山頂は10名ぐらいの人で埋まっています。
剱岳、立山が姿を現してそれはそれでカッコいいのですが、山頂から一番カッコよく見えるのは、これから目指す双耳峰の鹿島槍ヶ岳。
圧倒的な重量感もそうですが、頂きまで続く細くて急峻な尾根がアクセントになって迫力満点です。
山頂からは今日歩く尾根が全て見えていますが、
「この尖がった岩場のどこにルートがあるんだろう?」
「なんでこんな危険なルートをチョイスしてしまったんだろう???」
と不安は募るばかり。
山頂を埋める登山者も五竜山荘に戻る人がほとんどで、鹿島槍へのルートには誰も進んでいきません。
ただ空を見上げると、天気は最高。
「こんな登山日和に行かなくてどうする?!」
意を決して山頂からの急なガレ場を下り始めます。
五竜岳~北尾根ノ頭
さっきまであんなにたくさんいた登山者がどこにもおらず、登山道の雰囲気が一気に変わります。
警戒している登山道ですが、急なガレ場・ザレ場を下りるだけで、なかなか鎖場は現れません。
多少高度感はあるものの、慎重に下りていけばそれほど危険な感じはしないです。
ただこのガレ場・ザレ場を下った後に、尖がった岩場(G4・G5と呼ばれるところ)が見えています。その荒々しい姿が近づくにつれ、一筋縄ではいかないことが嫌でもわかります。
20分ほどガレザレを下ると徐々に鎖も現れてきます。落ちても死にはしない感じだけど、当然気は抜けません。
このころからキレット小屋からの登山者数名とすれ違いました。
少しお話を聞くと、
最初は緊張したんだけど、徐々に怖さが薄れてきて、今は逆に楽しいかも♡♡♡
と。
皆さん、危険地帯を長時間くぐり抜けてきたせいか、いくぶん麻痺されておられるようで、しかもテンション高めです。(それが逆に怖いんですけど。。。)
岩場が楽しいなんて境地になれない私は、より慎重に危険地帯を通過していきます。
気が付くと「G5」の看板。一番ヤバそうなところでしたが、緊張のせいか、そこまで怖さは感じませんでした。
G5を過ぎて、急なザレガレを下ったところで、変な鳴き声が聞こえてきました。
声の方向を見てみると、この夏初めて会う雷鳥さんです。
岩場を回り込んで少し稜線を歩くと休憩に良さそうなピークに出ました。北尾根ノ頭です。
まだ時間は9時前。今日の目的地キレット小屋までは1時間ちょっとなので、時間はたっぷり。この北尾根ノ頭でのんびりすることにします。
北尾根ノ頭~キレット小屋
今回の山行では、「他の登山者の方に積極的に話しかけてみる!」というテーマの他に、
「景色を眺めてボーっとする!」
というテーマも持っていたんです。
とことん距離を稼ぐ山行も達成感がスゴイのはよく理解できるんです。
出来るだけ長い距離を、出来るだけ早く移動する。私もどちらかというとそちら系の人種。
マラソンもやってたし、今でもロードバイクに乗って毎日のように運動をしているので、当然人よりも早く山は駆け抜けられちゃう。
その優越感からついつい「頑張る登山」になりがちなんだけど、ただ昔から、雄大な景色を眺めながらゆっくりするのも好きな私。
だから今回の山行は、あえて急がない。
1日の行程を5時間程度に抑えて、ゆっくり歩いても次の宿泊地には午前中に着いてしまうという行程を組んだのもそのため。
今日の宿まではあと1時間。しかもまだ朝の9時で、天気も最高!
よし、本腰を入れて、ここで、ボーっとしようっ!
真正面には剱岳、歩いてきた道を振り返ると五竜岳に続く岩岩しい稜線がカッコいい。さらに存在感を増した鹿島槍も圧倒的。
人もほとんど通らないし、たまに人が来ても休憩もせずに先を急ぐ人ばかり。
こんなに天気が良くて、山々が圧倒的な姿を見せてくれている。それを1人優雅に眺めることのなんと贅沢なことか。
ずっと同じ風景なんだけど、まったく飽きが来ない。永遠に眺めていられそう。
ただ天気が良すぎたのが災いし、首筋に当たる日差しが痛いし、暑過ぎる。
2時間ほどの滞在で「北尾根ノ頭」を泣く泣く後にします。
ロノ沢のコルまで下り、登り直して西斜面をトラバース。最後に鎖ハシゴをやっつければ、キレット小屋に到着です。
キレット小屋にて
キレット小屋には12時に到着。
宿泊の受付をしていると、ぶっきゃらぼうな小屋番さんに
明日はどこまで?
と聞かれ
冷池山荘までです
と答えると、
ああ、キザミね。。。(-.-)
と。。。
(長い距離を歩く方が偉いんですか?)と少しムッとするものの、顔には出さずに、
私、足遅いんですよ
と笑顔で答えます。
部屋に案内されると、1番乗りのため壁際のグッポジを指定されます。
繊細な神経をお持ちの方はよくわかると思うんですけど、左右に人がいる状況と、片方が壁っていう状況とでは、睡眠の質がかなり変わりますよね。
今回小屋に5泊したんですけど、1日に5時間程度の行程にしていたのもあって、ほぼ一番乗りで小屋に着いちゃうので、結局5泊とも壁際のポジションを確保できました。
キザむ登山には、こんな恩恵もあるんですよ!小屋番さん!!(声には出しませんけど・・・)
ちなみにこのキレット小屋、事前予約しておくと寝床を確保してもらえますが、予約なしだと、予約なしの人だけのゾーンに案内されて、詰め込まれることも。
山では予定通りに行動って難しいですけど、前日でもいいので事前に予約されることをおすすめします。
日が陰ってくるのを待って、小屋の前のテラスに出てみます。
ちなみにこのキレット小屋、西向きの風景しか望めません。小屋の東側に回り込もうとすると、「危険!ここから先に入らないで。死人出てます!」の看板が。
この小屋、本当に恐ろしい場所に立ってます。
小屋の前のテラスで一緒になった人と楽しくおしゃべりをして過ごします。さすがにキレット小屋に泊まる人達だけあって、皆さん色々な山に登られている人ばかり。
おすすめの山とか、体験談とかいろいろ聞けてかなり楽しいひと時を過ごせました。
夕飯は5時から。
五竜岳の下りですれ違ったお姉さんが「小屋番さんは塩対応だけど、晩御飯は美味しかったよ」と言っていた通り、確かにレベルが高い。
ハンバーグは旨いし、味噌汁も具沢山で、今回5泊した中でも一番美味しい食事でした。
夕飯が終わって小屋の外に出てみると、雲海に浮かぶ剱岳と綺麗な夕焼け。
明日も天気は良さそうです。
小屋の就寝は19時。問答無用で電気が消されます。今回5泊した山小屋の中で一番早い消灯です。でもこの硬派な感じ、嫌いじゃないかも。
3日目
キレット小屋~鹿島槍
起床は3時半。といってもさすがにキレット小屋。他の人も暗い中、すでに準備に勤しまれています。
4時半になると問答無用で電気がつきます。このあたりの割り切り感も、嫌いじゃないです。
早立ちの人が、ヘッドライトを点けながら次々と出発していきますが、私は”刻み”の冷池山荘まで。ゆっくり朝食をいただきます。
朝食を食べていると、小屋番の人が、今日の天気や注意事項などなどをアナウンスしてくれます。
ぶっきゃらぼうな小屋番さんですけど、こういう情報をしっかりと登山者に伝えてくれるのは、さすがです。
昔ながらの小屋番さんですけど、嫌いじゃないです(昨日は「ああ、キザミね(-_-)」って言われて、ちょっとムッとしたけど)。
この小屋をでるとすぐに、この旅最難関と思われる八峰キレットが待ち構えています。しっかりと準備体操をして出発します。
ただ、小屋のすぐ横、一歩目からいきなり「ハシゴ」と「鎖」が連続します。
八峰キレットは少し先だと思って油断していたのと、からだが完全に起きていないので、かなり怖いです。
焦って通過すると痛い目に合いそうなので、後続数名に先に行ってもらい、息を整えて慎重に進むことにします。
ほどなく行くとキレットの核心部へ到達。
ハシゴを2つ下りて、軽くトラバースすると「ここがキレット」の看板。一瞬すぎて拍子抜けする感じですけど、キレットは無事に通過できたみたいです。
ここから一気に鹿島槍に向けて高度を上げていきます。
キレット小屋を一緒に出発した人達と前後しながら登っていきますが、この登り、岩場もあるし、ガレ場もあるしで、意外にイヤらしい。
しかも岩ももろい。浮石や落石を出さないように注意しながら、黙々と登ります。
約1時間半で鹿島槍北峰に到着。
雲一つなく、360度すべてが見渡せる圧巻の景色が広がります。
続いて南峰へ。遠くから見る姿からは想像もできない荒々しい吊り尾根を、息を切らしながら登り詰めると、そこは人で賑わう南峰山頂。
北峰からは荒々しい五竜岳方面が見どころでしたが、南峰からは剱岳・立山の眺めが抜群。
さらに南に目を向ければこれから歩く冷池山荘・爺ヶ岳・種池山荘の稜線が大蛇の様に横たわっていて、迫力満点。
今日の宿はすぐそこに見える冷池山荘。今日のゆったり・まったりポイントは、この鹿島槍南峰で決まりです。
鹿島槍~冷池山荘~種池山荘
鹿島槍からの眺めは、360度すべてに見どころがあって、どちらを向いたらいいのか迷うほど。
ただ昨日と同じで、天気が良すぎる。贅沢な悩みなんですけど、日差しが痛い。さらにやっかいなのが、この鹿島槍南峰、人が多すぎるということ。
ツアー客や登山初心者も多く、皆さん大騒ぎ。
折角の大パノラマですが、俗人的な雰囲気に飲まれて、ゆったり過ごすには少し場違いな感じ。
もう少しいる予定だった山頂ですが、1時間ちょっとで下山に移ります。
(このままじゃ、今日の宿、冷池山荘にかなり早くついてしまいそう。。。)
景色を眺めつつ、そこかしこで休憩しつつ、ゆっくり登山で進みますが、10時半には登山客でごった返す冷池山荘に到着してしまいました。
さっそく宿泊の受付をしようとしたところ、受付のお姉さんが、
今日はかなり混んでまして、1枚の布団に2名になります。
次の種池山荘まで足を伸ばされた方が、空いてると思いますが。。。
との有り難いアドバイスを。
時間はまだ10時半。冷池山荘から種池山荘まではコースタイムで2時間半なので、十分に行けそうです。
宿泊の受付を中止し、コーラを一気飲みして、種池山荘へ向かいます。
多少雲の出てきた爺ヶ岳の中峰・南峰にもちゃんと登頂しつつ、種池山荘へ到着したのは12時半でした。
種池山荘にて
受付後、部屋に案内してもらう時、小屋のお姉さんから
今日は、8枚のふとんで10名寝てもらう予定なので、奥から詰めていってくださいね。
と。
山の日の三連休の中日。混雑は覚悟していたのですが、冷池山荘より全然マシで、ホッと胸をなで下ろします。
着替えをすませて、遅めの昼食をとろうと種池山荘名物の「ピザ」を頼むと、さっき終了しましたと(T_T)
泣く泣くカレーライスに変更し、喫茶室へ行くと、昨日キレット小屋で一緒だった方が涼んでおられます。
今日、冷池山荘で宿泊って言ってなかったでしたっけ??
と怪訝そう。
冷池山荘で、1枚の布団に2名と言われたので、こちらまで逃げてきました。
などなど話をしつつ、しばし楽しく過ごします。
カレーを食べ終え、部屋に戻るとこの御仁と偶然同じ部屋。他の人も巻き込みつつ、夕食まで楽しく過ごします。
夕飯を食べ終え部屋に戻ると、8人部屋で10名寝てもらうと言われていたものの、いまだに8人だけ。
「今日はこれ以上来ないよね?」「1人1枚だね。」なんて会話をしていたら、小屋のお姉さんがきて、
これ以上登山者は来ないので、1人1枚のふとんを使ってもらっていいですよ。
あと、お隣の部屋が空いているので、どなたかそちらへ移動しませんか?
とのこと。
入口に一番近かった私は、すぐさま立候補。
新しく案内された部屋は8枚の布団に4人だけという、山の日の夜とは思えない空き具合。
超ラッキーと思ったものの、先客3名の内、2名は不在で、唯一部屋におられた方に「よろしくお願いします」と元気に挨拶するも、目でうなずかれただけで話しかけるなオーラ満開。
静寂に包まれます(^_^;)
(部屋を移動したのは失敗だったか?)と思うも後の祭り。楽しい会話は諦めて、今日は日記を書くことに専念しようと意を決します。
そうこうしているうちに静寂で包まれた部屋に、残りの2人が帰ってこられました。このお二人が気さくな方々だったので、さっきまでの静寂が嘘のように、一気に会話の花が咲きます。
話しかけるなオーラ満開だった方も、徐々に会話に参加され、就寝まで4人で楽しいひと時を過ごすことが出来ました。(少しだけ人見知りな感じでしたが、いざ話をしてみると全然悪い感じの人じゃなかったです。。 m(-_-)m スマヌ)
こういう話しかけるなオーラが出ているような人に、話しかけていいものか悩むんですよね。1人でいたい気持ちもわかりますしね。
しかも山小屋での会話って、過去のスゴイぞ自慢みたいな感じになりがちじゃないですか。
正直、聞きたくないって時もありますしね。
ただ完全に沈黙の山小屋も嫌だし、逆にバカ騒ぎする感じも嫌だけど、程よい距離感で会話を楽しめた時って、気持ちよくありません?
部屋を移って失敗だと思った瞬間もありましたが、最終的にはすごくいい感じの空間になったので、気持ちよく一日を終えることができました。
ご一緒してくださったみなさん、ありがとうございました。
4日目
種池山荘~岩小屋沢岳~新越山荘
目を覚ますと、同じ部屋の2名はキレット小屋を越えて五竜山荘までいくとのことで、早立ちされています。
私の今日の行程は、2時間半先の新越山荘まで。普通に歩いても、8時には着いちゃいます。
なので今日もゆっくり、まったり。
朝食を食べて、トイレに行って、玄関先で景色を眺めて、ゆっくり出発します。
半分くらいに減ったテン場の横を通り、クマザサの道をしばらく行くとお花畑が。もともとお花に何の興味もない私でも、思わず写真を撮ってしまうくらい、色々な花が咲いています。
今日のピークは一つだけ。岩小屋沢岳のピークを目指して徐々に高度を上げていきます。左側が切れ落ちているザレ場の細尾根は意外に手強いです。
ただ今日も天気は快晴。すぐそこに迫ってきた剱岳と立山の姿が、かなりカッコよくてしばしば足をとめて見とれちゃいます。
ゆっくり歩いていたはずなのに、あっと言う間に岩小屋沢岳に到着。ここまでくれば今日の宿「新越山荘」まではあと30分というところ。
今日はこの岩小屋沢岳の頂上で、ゆっくりすることにします。
この岩小屋沢岳。はっきり言ってほぼ無名の山。ほとんどの登山者にとって、針ノ木岳~種池間の通過点でしかないような、そんな存在。
ただ、この山頂からの剱岳と立山の眺めはかなり圧倒的でスゴいです。
この山、あまり人気がないんですけど、眺めは抜群なんですよね。
と山頂でお話しした地元の方もおっしゃってましたし。
確かに剱岳と立山を真正面にして、ここまで近い位置から眺められる場所って、他にないかもしれません。
しかも視線を下げれば、下ノ廊下が通る黒部別山と丸山が岩の塊となって鎮座していて、これも迫力満点。
いくら眺めていても飽きが来ないです。
今回の山行の間、奇跡的にずっと晴天だったので、いろいろな場所から、いろいろな風景を楽しめたんですけど、ここからの眺めが一番好きかもしれません。
結局この山頂で3時間も景色を眺めていました。。。(^_^;)
(ただ3時間もいたのに、ほとんど写真も撮ってないんですよね。完全に景色に見入ってました。)
さすがにお腹が空いてきたので、今日の宿「新越山荘」へ向かいます。
歩くこと30分。新越山荘到着は11時でした。
新越山荘にて
今回の山行で、この新越山荘に絶対に泊まってみたかったんですよね。
前泊した種池山荘からなら、この新越山荘を通り越して、針ノ木小屋に宿泊したり、一気に扇沢まで下山することも可能なコースタイム。
でも、この山小屋。すごくいい山小屋の「ニオイ」がしたんですよね。
こじんまりした山小屋で、テン場はなし。立地的に通過点になりやすくて混雑知らず。しかも立地が抜群にいいので、小屋からの景色はスゴイんじゃないか。そんな予感がしてたんです。
期待に胸を膨らませながら小屋に入ると、受付のお姉さんが、
お帰りなさい。お疲れさま♡
と満面の笑みで出迎えてくれます。
喉が渇いていたので、受付と同時にコーラを所望。
ゆっくり飲んでくださいね♡
飲み終わったらお部屋に案内しますから、声をかけてくださいね♡
お姉さんの言葉のあとにハートマークが見えるんですけど。。。
こんなに温かい言葉で出迎えてもらえるとは想像すらしておらず、第一印象から期待以上です。
お姉さんの手を煩わせてはいけないと、コーラを一気飲みし、部屋へ案内してもらいます。
客室は2階で、窓からは剱岳の雄姿がドーンと。これも想像以上。
しかも8人部屋に布団は6枚。布団と布団の間に空間が広がってます。
(何ですかこの山小屋、天国ですか?!)
着替えを済ませ、ラーメンを注文し、喫茶室へ。
この喫茶室からも剱岳が綺麗に見えています。
喫茶室にラーメンを運んできてくれたのは、片言の日本語を話すアジア系の女の子。
この女の子も、満面の笑顔で給仕してくれます。
忙しい山小屋では到底味わえないホスピタリティ。
小屋自体はそんなに新しい感じでもないんだけど、どこもかも綺麗にされています。部屋の案内図とかも手作りで、なんだか温かい。
小屋中にゆったりした空気がながれていて、とても気持ちいい空間です。
期待通りというか、期待以上に素敵な山小屋で、また近いうちに再訪しちゃうかも。
午後はずっと喫茶室で他の宿泊者の方とおしゃべり。
ゆったりまったりと楽しい時間を過ごして、19時に就寝としました。
5日目
新越山荘~針ノ木岳~針ノ木小屋
登山5日目。
早起きが習慣化してきた私は3時には目が覚めます。
真っ暗な中、小屋の外に出てみると満天の星空。流星群が来ているとのことだったので、寒い中空を見上げていると10分ほどで3つの流れ星が。今日もいい日になりそうな予感。
朝食を食べて出発は5時半。まずは最初のピーク鳴沢岳へ。
扇沢に少し雲はありますが、今日も天気は良さそう。
しばらく登っていると、鳴沢岳山頂手前で、昨日新越山荘でラーメンを運んで来てくれたアジア系のバイトの女の子が1人で写真を撮っています。
話かけてみると、台湾から九州に日本語を勉強に来ている留学生で、どうしても日本の山でアルバイトがしたかったんだとか。
今日は1日休暇で、針ノ木岳まで往復する予定とのこと。
この女の子、雄大な景色がよほど気に入ったのか、時々足を止めて、10~20分と飽きずに景色を眺めています。
そうこうしている間に私が先行するんですが、この女の子、歩くのが異常に速い。
私が先行する。女の子に追い抜かれる。女の子景色を見る。私が先行する。
そんなことを繰り返しながら、結局針ノ木岳の山頂までつかず離れず一緒に歩いたんですが、すごくいい子でとても楽しかったです。
しかもこの針ノ木岳までの稜線も登り応えがあって、景色も良くて、本当にいいルート。
3年前にテント泊した五色ヶ原で、黒部湖を挟んで対岸に位置する山々を見て、「いつか登ってみたいな」と思っていたのが、やっと実現したのもかなり嬉しい。
その五色ヶ原の平らな大地が、目と鼻の先に大きく広がっています。
針ノ木岳への急登を登りきると、北アルプス南部の山が一気に広がります。
立山・五色ヶ原・薬師岳・水晶・槍・穂高。赤牛や野口五郎の巨体、下に見える黒部湖と高瀬湖の色の違いが不思議です。
台湾の女の子はここで引き返すとのことで、お別れ。
台湾から出てきて、片言の日本語しか話せないのに、北アルプスの山小屋でバイトするという勇気に妙に胸を打たれ、父親のような気持ちで後ろ姿を見送ります。
私はそのあと山頂で1時間ほど景色を眺めてから、この旅最後の宿泊地「針ノ木小屋」へ。
1時間ほどで、針ノ木小屋に到着。
のどが渇いていたのでコーラを所望したところ、炭酸はすべて売り切れと。
無性にコーラが飲みたくなって、このまま扇沢まで下ろうかと頭によぎるも、疲労から断念。もう1日山の中で過ごすことに。
針ノ木小屋にて
針ノ木小屋に到着したのは12時ちょうど。
平日にしては混んでいるらしくて、10人部屋で10人。(最終的に他の部屋はガラガラだったのに、私の部屋はきっちり10名が詰め込まれました。(-_-;)平日なのに今回の山行で一番窮屈。。。)
着替えを済まし食堂へ。
名物の「針ノ木ラーメン」をいただく。野菜あんかけラーメンが、疲れたからだに染みわたります。
外はガス。部屋でゆっくりと過ごします。
夕飯には鯖の味噌煮にミンチカツ。食事は美味いです。
食事を終えて外に出ても、まだガスガス。どうやら今日は展望は望めなさそうです。
6日目
針ノ木小屋~扇沢
今日は扇沢へ下るだけ。およそ3時間の行程です。
ゆっくりとご飯を食べて、小屋の外に出てみます。
北側の扇沢方面は雲で埋まってますが、南側の山並みはその山容を見せてくれています。
特に槍ヶ岳と前穂の黒く尖がった姿は、悪の宮殿を思わせる感じでそびえていて、超カッコよかった。
綺麗な景色に後ろ髪を引かれますが、下山に移ります。
一気に高度を下げると完全に雲の中。昨晩の雨で、どの岩も滑る滑る。
「早く雪渓が現れないかな」と思いながら、さらに高度を下げていきます。
しばらくすると突然雲の中から雪渓が。
ガスっているので20mほど先までしか見えませんが、取りあえず4本爪アイゼンを装着し、雪渓へ踏み出します。
30mほど進むと雪渓は終了。
すぐに雪渓が再開するかもという期待のもと、アイゼンはつけたままでしばらく歩きますが、一向に雪渓は現れません。しかも岩のもろい濡れた夏道。
あきらめてアイゼンを外し、ストックもしまって、急な岩場の夏道を下ります。
途中、登ってきた人とすれ違ったので聞いてみたら、残念ながら雪渓は崩壊していて、下まで全部夏道との情報。
昨日針ノ木雪渓を登ってきた人は、ほぼ雪渓歩きだったと言っていたので、どうやら夜中の雨で雪渓が落ちたみたいです。
若干うなだれながら、夏道を延々と下り続けます。
岩は濡れているし、脆い。鎖も劣化していて信用できない。今回の山行の中で一番難易度の高い登山道だったと思います。(八峰キレットの方がよっぽど歩きやすかったかも。。。)
ほぼ夏道だったため、多少時間はかかったものの、結局コースタイム通り3時間ほどで扇沢に到着。
無事に5泊6日の山行を終えることができました。
扇沢~松本
ここからは番外編。
6日も山の中にいたので、まずは風呂。大町温泉郷の「薬師の湯」を目指します。
バス待ちをしていると、昨日針ノ木岳山頂で少しお話しをした鹿児島からきた女性と遭遇。
この女性、剱岳と立山に登ったことで満足できず、扇沢から針ノ木雪渓を登って、新越山荘で宿泊。
今日は新越山荘から種池山荘を通って柏原新道を約3時間で駆け下り、朝の9時には扇沢に立っているという健脚の持ち主。
カワイイ顔をしているのに、かなりの山バカさんのよう。(ちなみにこの女性も新越山荘が抜群に気に入った様子でした。)
バスに揺られること15分で薬師の湯に到着。
6日ぶりのお風呂につかりながら、今回の山行を振り返ります。
今回の山行では、「いろいろな人に話しかけてみよう」というテーマを持っていたんですけど、本当に色々な人と出会って、お話をすることができました。
そこで思ったのが、前出の女性のような「山バカ人間の如何に多いことか」ということ。
年齢・性別関係なく、皆さん本当に山が好きで、実に自由に山を楽しんでいらっしゃいます。
「剱岳・立山に登った翌日に、針ノ木岳に登り直す単独行の女性」
「片言の日本語しか話せないのに山小屋でアルバイトをする台湾の女の子」
「60歳を超えてから地元の山岳会に入って、今回が初の単独登山というおばさま」
「トレランでレースにも出てるけど、あえて歩いて山に登るイケメンさん」
「鹿島槍&星空の写真を撮りたくて山に登ってきた若者」
「朝起きたら天気が良くて、居てもたってもいられずに登りに来ちゃった地元のおにいさん」
「道のない山に登るのが仕事だった元測量技師のおじいちゃん」
などなど。
本当に色々な山バカさんに出会って、いろいろなお話を聞かせてもらいました。
人と話すって楽しいんですね。
どちらかというと人見知りな私。こんなにも誰彼となくお話しできるとは思いもよりませんでした。
お風呂から出てバスに乗り、さらに信濃大町駅から松本駅へ電車で移動。
電車から降りたところで、先ほどの鹿児島の女性とばったり。
どうやら同じ電車だったみたい。
人でいっぱいの松本駅の構内を肩を並べて歩きますが、なんだか妙な違和感が。。。
先ほどまで気軽に話が出来ていた女性なんですけど、街中で女性をナンパしているような罪悪感というか、なんでこのカワイイ女性と気軽に話しているんだろうという妙な違和感。
どうやら下界に戻ってきてしまったようです。。
普段は人見知りな性格でも、初対面の人と気軽に話ができてしまうのが、山という空間のもう一つの魅力なのかも。
松本駅からすぐの「餃子の王将」でチャーハンを頬張りながらそんなことを思う52歳・夏でした。
まとめ
8月のお盆休みを利用して、後立山連峰の南部、五竜岳から針ノ木岳までを5泊6日で縦走してきたというお話しでした。
いつもはテント泊が多い私ですが、今回はすべて小屋泊まり。しかも1日当たりの歩行時間は4~5時間程度に抑えるという、ゆったり&贅沢な登山。
しかも一度も雨具を着ていないという、ちょっと考えられないくらいの晴天続きで、最高の登山になりました。
前半の岩稜帯も楽しかったんですけど、私のおすすめは種池山荘から針ノ木岳にかけての稜線歩き。
雄大な景色を眺めながら、のんびり歩きたい人に最適だと思います。
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